「たとえば、この店にだね、本がならんでいるが、それは店の棚の一部分だ。ほかの棚はがらあきだ。しかしはたしてがらあきなんだろうか。そこには、ぼくらの目には見えない本がぎっしりならんでいると考えてはどうだろうか」
「そうですね。そうも思われますね。本のならんでいるぐあいがへんてこですからね」
「もう一つ、きみは気がついていないか。店には、ぼくらには姿の見えない客が大ぜい、でたりはいったりしているということを」
「なんですって。姿の見えない客ですって」
「そうなんだ。その証拠には、入口の扉を注意して見ていたまえ。ひとりでに、開いたり閉まったりしている。風もないのに、へんじゃないか。あれは、ぼくたちには見えないけれど、客がさかんにあそこから、でたりはいったりしているんだと解釈できやしないか」
「それは、りっぱな推理ですよ。きっと、それにちがいありません。なぜ、姿の見えない人間――人間でしょうか、とにかく、どうしてそんな姿の見えない者がたくさん動いているのでしょうか」

 

GINZAフィットネス クレジットカード110番